うぃっちたいむ‼ワークショップ「ゲームデザイン・企画書の作り方」レポート

「ぼく/わたしの考えた企画書」をプロからアドバイス

うぃっちたいむ‼実行委員会は2014年12月21日、弘前市の小学生~高校生の子どもたちを対象にしたワークショップ「ゲームデザイン・企画書の作り方」を開きました。講師には20日開催のメインイベントに引き続き、エンジンズ取締役のアダチヤスシさん、同じくエンジンズの企画デザイナーであるせのおしょうごさんをお招きしました。いわゆるファミコン世代から今の子どもたちまで、おそらく誰しも、ノートいっぱいにオリジナルのゲーム設定やキャラクターを描いた経験があるのではないでしょうか?今回は、そんな「ぼく/わたしの考えた企画書」を、第一線で活躍するプロに見てもらいアドバイスをもらっちゃおう!という試みです。幼いころの将来の夢がゲームデザイナーだった私も、興味津々で子どもたちのプラン、お二方の目の付け所を観察しました。

「ゲームデザイン・企画書の作り方」レポート

「サムライスピリッツ」「星のカービィ」「ファイヤーエムブレム」など多くの有名タイトルを手掛けたアダチさんは〝企画書のプロ〟。せのおさんは弘前の皆さんに愛されているご当地キャラのたか丸くんをはじめ、キャラクターからユーザーインターフェースまで幅広いデザインを担っておられます。お二方には事前に、今回寄せられた企画書をチェックしていただき、当日は参加した子どもたちから発表してもらう形式で実施しました。

ワークショップは弘前市のまちなか情報センターで開催し、小学2年から高校3年まで8人が参加。アダチさんははじめに、みんなの企画書を見て「このままプロの世界に出しても通用する、レベルの高いもの」と紹介。その上で「みんなに欠けているのは誰のために書いた企画書なのか、ということ。そこがプロになる第一歩」とアドバイスしました。

「ゲームデザイン・企画書の作り方」レポート

なんでも自由にできるゲーム

「主人公 神(大陸などを作る。いろいろ作ったら、もっと作れる)
希望は3DS(理由は手軽にできるから)」

なりたひゅうが君が出した、この3行の企画書に対してアダチさんは「素晴らしい」の一言。まず「なんでも自由にできる」という点から、世界中でヒットしているオープンワールド型のゲームであることが第一に明言されていることを指摘しました。「主人公が神」という点も、世界規模のマーケットを狙った大作は神話が題材になっている作品が多いことから「世界の人が喜ぶ作品の基本が入っている」と講評。プラットフォームに3DSを選んだ理由が「手軽にできる」という点も「ゲームデザインでは、遊び手が面倒くさいと思うことを簡単にしてあげることが大事」と、目の付け所を評価しました。

「ゲームデザイン・企画書の作り方」レポート

おしくらコロシアム

きたやまかくご君の「おしくらコロシアム」は、相撲やベーゴマのように、自機を使って相手を場外に押し出すゲーム。多くのパーツを使って自分好みのカスタマイズをしていく楽しみと、なにより「体が不自由な人に楽しんでほしい」という明確なターゲッティングがあることを伝えました。

「普段、自分の身体ではできないことを楽しんでもらいたい」という理念に、アダチさんは「強い意志を持って考えている」と驚愕。これを踏まえて、当初はさまざまな機能が使えるという点でパソコンがプラットフォームに設定されていましたが「不自由な人でも簡単にできるように、もっと手軽に、というところを考えると3DSがいいかな」とアドバイスされました。

海外ユーザーも取り込む音楽ゲームを企画

やましたゆうせい君・かいおう君の兄弟は海外ユーザーも取り込む音楽ゲームを企画。通信で協力・対戦プレイができる、ダウンロード、アップデートで新曲が入手できる、ネットランキングや課金コンテンツなど、具体的なプランが示されました。

アダチさんは「プロの企画書としては75点。このままでも十分通用する。世界中で楽しまれており、人気が安定している音楽というジャンルに目を向けたことは正解」と評価。その上で、楽曲のジャンルや世界観をどうするか、ターゲットをどこに置くかを尋ねました。兄弟でその場で相談、アダチさんは「自分ならおしゃれ、かっこいい、完全に大人向けにする」と提案しました。兄弟という〝チーム〟で出した企画書であることに触れ「ゲーム作りはチームでするもの。どんどん話し合って意見をぶつけあってみて」とまとめました。

「ゲームデザイン・企画書の作り方」レポート

ドラクエと怪異ムードを合わせたRPG

おのりなさんはドラクエと怪異ムードを合わせたRPGを企画。イラストも数多く盛り込みました。アダチさんは「この企画の一番優れているところは女の子が主人公というところ。ゲーム人口のうち女の子は3~4割だけど、ここを確実に取れるなら商売になる。そのためには女の子に必ず喜んでもらえるゲームを作ろう」と講評。「男の子でも楽しめるものにしないと、とかは全然考えなくていい(笑)」と話し、「クリエイターは『これでいこう』と思ったことを徹底的にやることが重要」と呼び掛けました。

りなさんの姉、おのみさきさんはももいろクローバーZのファンゲームを企画。ミニゲーム集のデザインで、ゲーム内でのコレクション性ももたせたアイデアをまとめました。「企画書的には、このままでゲームを作れる状態」とアダチさん。「ももクロを好きな人は買ってくれる。もっとよくするには、まだファンじゃない人も好きになってもらえるゲームにしよう。面白いゲームならたくさん売れて、ももクロのファンも増えてWINWINにできる」とアドバイス。

天道虫の伝説

あおたそらくんは「天道虫の伝説」という昆虫が主役のゲームを提出。善の虫と悪の虫の2陣営がある世界で、劣勢に立たされた善玉が「伝説の天道虫」の力を借り、次元を超えて悪玉を倒しにいくという独創性あふれるストーリーに、多くのイラストも添えてくれました。

「この強烈な世界観をもっともっと深く掘り下げてほしい。そこにゲームとしての面白さをくわえていくことができれば」とアダチさん。「虫は子どもはみんな好きで、世界で受ける。だけど虫が題材のゲームはあまりない」と、マーケティング面での優位面も指摘されました。

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スライム出世記

きむらひなさんの「スライム出世記」はメタ的要素を含んだRPG。最弱に位置付けられるモンスターのスライムが魔王を目指すゲームで、一般的には主人公となる勇者たちが敵として出現。スライムが成長し、魔王を倒した後は人間を支配するゲームに変わります。

アダチさんは「小さな弱いものが成長して強いものを倒すというところが面白い点。ここをもっと突き進めて」とアドバイス。「魔王になったあとどうすれば面白いかな、という『その先』を考える想像力が大切。もっと膨らませてほしい」と、期待を込めた注文もありました。

ワークショップを振り返り

「ゲームデザイン・企画書の作り方」レポート

発表を振り返り、アダチさんは「アイデアは君たちだけの宝物。とにかくアイデアを膨らませてほしい」、せのおさんは「自分ならこんな風にデザインしたい!とワクワクした。世界観をデザイナーに押しつけるような、強い思いを持ってほしい」と総評。エンジンズが開発した、バンダイナムコゲームスのソフト「ご当地鉄道~ご当地キャラと日本全国の旅~」争奪ジャンケンもあり、充実のワークショップでした。

と、これで終わり、ではありません。今回のワークショップに応募いただいた企画書の中からなんと、アイデアを元に製品化へ向けた取り組みがスタートしております!

うぃっちたいむ‼はイベント名であり、またプロジェクト名でもあります。単発的な催事だけではなく、継続した取り組みを通じてポップカルチャーが津軽、青森に根付き、盛り上がっていくことを目指しております。今後も随時、活動を紹介してまいります。
文責:福田藍至(うぃっちたいむ‼実行委員会)

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